「材料と環境」分科会
主査:石原 慶一
(京都大学エネルギー科学研究科教授)
21世紀に解決しなければならない重要な問題として地球規模での廃棄物、資源の枯渇がある。これらに関連した技術開発とその評価に関してそれらを個々に取り扱うのではなく、異分野の研究者及び技術者がエネルギー及び環境的視点から様々な材料に係わる検討課題を横断的に検討し、解決していく必要がある。
例えば、日本から新製品や中古品が大量に海外に輸出されているため、有害物質を含む材料の国際的な制限や発展途上国の廃棄物問題など環境を取り巻く国際問題を材料という観点から討議していく必要がある。 本年度は、日本における関連する取り組みについて調査を行った。その結果、様々な学会などで環境に関連する委員会が組織され情報収集されていることが分かった。次年度以降、積極的に他学会に働きかけ情報の共有を提案するほか、東南アジア諸国における実情を調査し、問題点を明確にする。
「分散型電源」研究会
主査:大山 力
(横浜国立大学大学院工学研究科教授)
ここ数年の小型発電装置の技術進歩は著しく、特にマイクロガスタービンや燃料電池の実用化研究が盛んである。発電場所で温熱も利用できるコジェネは病院や公共施設での利用が期待されている。また、小型で高性能な固体高分子型燃料電池は、自動車に見られるように輸送時のCO2排出量を少なくした手段としても大きな可能性を持っている。開発技術学会では多様な発電方式のメリット・デメリットを評価しながら、今後の内外の市場特性に最適な製品のイメージを求め、これらの技術を効果的に育成していく方策を考える。
「安全・快適な社会」研究会
主査:野田 忠吉
(住友精密工業社友)
昨年度は交通機関に的を絞り、鉄道、船舶、航空機、自動車の安全について研究をしたが、本年度は対象を地上交通(鉄道交通と道路交通)に絞り調査をするとともに、それに基づき事故を減らし安全性を高める方策を検討した。その結果、若年者に対する交通安全教育が成長の各段階で的確にかつ十分に行われるべきこととその方策を検討した。また国際標準化について我が国も積極的に取り組み、その基盤となる技術のたゆまぬ向上を図るべきことと、我が国でも鉄道RAMSに積極的に取り組む必要がある。本分科会の特徴は鉄道と道路交通両者の技術面、規格面、法規面など交通システムとしての仕組みについて、それぞれの優れた点を相互に取り入れ、活かして相乗効果をもたらすことが出来るような提言を行うことにある。
「適正技術の開発」分料会の終了
主査:村松喜八朗
(新日本ITU協会)
適正技術分科会は技術移転の可能な日本の技術について広く多くのセクターの「適正」「非適正」の概念を設定し、それらに共通する「要素」を見つけだし、その要素の「態様」によって、途上国の発展に有益・有効な「適正技術」のありかたについての条件を見つけだそうと発足した。分科会は定常出席者を対象におおむね毎月開催したが、テーマと講師によって分科会としてよりも広く学会会員全員に周知して開催するのが相応しいケースのいくつかは学会セミナーとして実施した。数多くのセクターを対象とすることは「要素」と「態様」の益々の複雑化をもたらし、当初目標とした「適正」であるためのこの両者の「帰納」を導くことはますます困難であることが見えてきた。「適正」の定義に評価の時期によるライフサイクルが存在することなどである。こうした当初目標との乖離を内在しながら、分科会そのものは好評で2年継続となり、テーマをやや「技術移転」にシフトし、「CSF理論」(注)の提起、「技術移転教科書」6冊の執筆、アジア経済研究合同学会(於北九州市)ヘの「技術移転」をテーマとした分科会メンバーの3論文提出などの成呆をあげた。当分科会の扱ってきたテーマは、その延長線上に「技術経営」的な更なる研究的な議論の深まりを必要としている。よって「適正技術」分科会は終結し、主査交代および幹事システムの変更等によりあらたな分科会を発足することとなった。
当学会の事業ではないが別途のブロジェクトで、昨年末ある途上国のルーラル電気通 信の笑体を見る機会があった。民営化などで途上国の通信も飛躍的に発展しているが、それは人口の10%か20%を占めるに過ぎない都市部の現象で、人口の大部分が住む農村部ルーラルの殆どの人達は一生電話に触れる機会もないという。これも先進国は人口の都市集中率が高く、現在の通 信網は携帯電話を含め都市に適合しているので、途上国のルーラルの人達が如何に電話等を欲しいと恩いかつ支払い能力があっても、現在は都市と同程度の価格でルーラルに提供する技術がない。「適正技術分科会」の終結時に、途上国に適正な技術が無い実体を見て来たわけで複雑な感慨をもった。
(注)CSF理論:分科会の主要メンバーである小原重信委員(千葉工業大学)によって提起ざれたCriticalSuccessFactof理論。詳細については同氏の技術移転教科書「技術移転の理論」(学会誌1999.11特集号)を参照されたい。
アジア地域新クリーン燃料研究会報告
幹事:足立 芳寛
1.本研究会の発足
アジア地域新クリーン燃料研究会は、開発技術学会発足の年の1995年12月に、国際的な開発の事例研究及び、持続的発展の為の環境と調和した新エネルギーの供給を目的に研究活動を開始した。研究対象としては、アジア地域を中心にした開発の可能性、経済性、技術的間題をとりあげ検討を行った。特に具体的課題として広範囲に利用が見込まれるクリーンなエネルギー源DME(CH3OCH3ジメチルエーテル)の合成技術のアジアにおける導入の可能性とその効果 について検討を行った。研究活動は、その技術的可能性評価と、経済性評価及ぴ具体的開発のシナリオ作りを過去5年間に渡り実施した。
2.研究会成果の実践
この間、本研究会の成果を受けて、1997年には、炭層メタンの液化事業として、約18億円の予算規模で通 産省の補助事業として5VdayのDME製造パイロットブラント建設が始まり、1999年に完成、その後の運転試験は予想を上廻る好成績を得て、現在更なる実験データの取得中である。
3.DME開発の意義
研究会の成果であるDMEの開発の意義は、
(1)大量の未利用資源を利用した液体燃料の供給が可能。未利用資源としては、炭層メタン、中小天然ガス田、各種低品位 炭など、化石燃料から、バイオマスなどの新エネルギー源まで、Gas状、固体状、エネルギー資源を現在最も利用に有利な液状燃料で、供給利用が可能となる。
(2)合成燃料としての環境特性の利点Gas又は、固体から、合成されるDMEは、CH3OCH3が成分であり、硫黄や窒素分を含んでいない利点の他、燃料に伴う黒鉛のススの発生がほとんどないなどDiese1用燃科、LPG代替燃料として有望視される。
(3)エネルギー供給計画上の意義2010年のCOP3対応年におけるエネルギー需給構造を考えると、原子力による供給源を補う新エネルギー源として、現在のインフラが利用でき、大量 に低コストで供給の可能性のある液体燃料の意義は大きく、商用ブラント規模の2500t/dayのブラントは、50万kw発電所に燃料を供給するもので、原発一基は、DMEプラシトの二基で代替可能となる。
4.開発技術学会における意義
開発技術学会は、持続的な発展が必要な今後の人類的課題を、技術開発と国際的な取り組みで解決を目指して来たところであるが、本DMEの例は、その技術性評価、経済性評価を踏まえた結果 、実際のパイロットブラントの建設、更には世界的な利用市場の開拓に発展した。これらは、開発技術学会のインキュベーター機能が成功した、具体例の第一例と位 置付けられよう。本研究会のインキュベーター機能は、本年3月をもって終了し、同時に通 産省に設けられたジメチルエーテル戦略研究会、さらには、国際DMEフォーラム(仮称)に展開される予定である。
【アジア地域新クリーン燃料研究会】
座長:藤元 薫 東京大学工学部教授
委員:大野陽太郎 NKK(日本鋼管株式会社)
足立 芳寛 東京大学工学部教授
小川眞佐志 元長岡技術科学大学教授
小林 正和 (株)日本自動車研究所理事
河本 光明 JETRO(ニューョー駐在)
他参加企業:
電源開発、東京ガス、大阪ガス、日本鋼管、住友金属工業、太平洋炭破、丸紅 他
団体:
海外経済協力基金、国際協力事業団、新エネルギー産業技術総合開発機構他
オブザーバー:
通商産業省、資源エネルギー庁
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開発技術学会
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